帝王切開とは?
お母さん、赤ちゃんのどちらかに問題があり、経腟分娩が困難あるいは経腟分娩のリスクが高いと推測される場合に選択される出産方法です。お母さんのお腹と子宮を切開して、赤ちゃんを外に取り出します。
帝王切開には「予定帝王切開」(選択的帝王切開)と「緊急帝王切開」の2種類があります。予定帝王切開はあらかじめ決められた日に計画的におこなわれるもので、通常当院では妊娠38〜39週に予定を組んでいます。緊急帝王切開はお母さんあるいは赤ちゃんに何らかの問題が起き、急いで赤ちゃんを取り出す必要がある場合におこなわれます。
日本では近年、出産数自体は減少していますが、帝王切開による出産の割合は増加しており、20年前は約10%だった割合は、2011年の統計では約20%と2倍に増えています。つまり、産まれてくる子供の約5人に1人は帝王切開で産まれていることになります。
帝王切開の主なケース
予定帝王切開が必要な場合
- 前回帝王切開(子宮破裂のリスクがあるため)
- 骨盤位(いわゆる逆子)(特に初産婦では難産となる可能性があるため)
- 児頭骨盤不均衡
- 多胎妊娠(双子以上)
- 胎盤位置の異常(前置胎盤などにより経膣分娩が困難なため)
- 母体感染症(HIV感染症など経膣分娩をすると母体から新生児に感染してしまう可能性があるため)
- 子宮筋腫・卵巣腫瘍の合併(子宮筋腫や卵巣腫瘍の位置や大きさによっては経膣分娩が困難なため)
- 子宮手術の既往(子宮破裂のリスクがあるため)
緊急帝王切開が必要な場合
- 胎児機能不全
- 妊娠高血圧症候群
- 常位胎盤早期剥離
- 分娩停止
- 予定帝王切開だった症例で、手術予定日よりも前に陣痛が来たり、破水してしまったりした場合
当院における
帝王切開の流れ
手術中の痛みをとる麻酔
(局所麻酔)
体を横向きにして腰のあたりの背骨と背骨の間から麻酔薬を注入します。
全身麻酔と比較した局所麻酔のメリットとしては、手術中もお母さんの意識を残しておいて赤ちゃんが出てくるところが見たり聞いたりして分かるようにできること、さらに、出生した直後の赤ちゃんの呼吸に対する影響を少なくすることが挙げられます。帝王切開だけであれば脊髄くも膜下麻酔(腰椎麻酔ともいう)で十分可能ですが、当院では手術後の痛みのことも考えて、脊髄くも膜下麻酔に硬膜外麻酔を併用する、あるいは、点滴からの鎮痛剤持続的投与の併用、のいずれかの方法をおこなっています。
手術
腹壁に切開(多くは横切開)を加えます。腹腔内に到達した後は子宮に切開を加え胎児を子宮外に取り出します。
臍帯(へその緒)を切断した後、臍帯および胎盤を子宮外に取り出します。
切開した子宮、腹壁を閉鎖して手術が終了します。通常手術に要する時間は30分〜1時間程度です。
退院
経腟分娩と比べて回復に時間がかかる分、入院期間が長くなってしまいますが、
手術後の経過に異常がなければ手術後6日目で退院となります。
経腟分娩と比較した
帝王切開のリスク
- 子宮周囲の臓器(膀胱、腸管、血管)を損傷させる可能性
- 手術後の創部の感染の可能性
- 経腟分娩と比べると術後の母体の回復に時間を要する
- 出生直後の胎児の呼吸障害(通常は一時的なものです)