お腹を切らずに
手術をおこなう方法
子宮の内側や子宮から膣への出入り口の部分にできた病変(主に筋腫やポリープ)を、お腹を切ることなく、経腟的に(子宮口側から)アプローチして切除や摘出をおこなう方法です。筋腫やポリープの切除や摘出以外にも、子宮の内側の癒着を剥離したり、さらには子宮の内膜を焼灼するなど、対象となる病気も多岐にわたります。
対象となる主な病気
- 子宮筋腫(特に子宮粘膜下筋腫)
- 子宮内膜ポリープ
- アッシャーマン症候群(子宮内腔癒着症)
- 過多月経
当院における
一般的な手術の流れ
手術前日
頚管拡張(子宮の入口を広げる処置)をおこないます。
※その後、ご帰宅いただきます。
手術当日
午前中に入院、午後に手術をおこないます。
- 麻酔は静脈麻酔あるいは腰椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)とします。
腰椎麻酔(脊髄くも膜下麻酔)の場合、患者さんの希望によっては手術中の意識をなくすようにしています。 - レゼクトスコープ(切除鏡)などを用いて病変の治療をおこないます。
手術時間は病変によって10〜60分と幅があります。
手術翌日
診察で異常がなければ午前中のうちに退院となります。
退院翌日には、社会復帰できるケースがほとんどです。
手術事例
月経以外の不正性器出血と不妊のため受診。子宮鏡検査で内膜にポリープを認めたために子宮鏡下に切除。その後不正性器出血も消失し、自然妊娠が成立した。
月経量が多く、貧血を指摘されたために受診。子宮の内側に直径2cmほどの子宮筋腫(粘膜下筋腫)を認めたために子宮鏡下に切除。その後症状の改善を認めた。
子宮鏡下手術の
メリットとデメリット
お腹を切っておこなう開腹手術、腹腔鏡手術との比較でいえば、以下のメリットとデメリットが挙げられます。
メリット
- お腹に傷ができないので美容的に優れている
- 手術後の痛みが少ない
- 手術中の出血量が少ない
- 開腹手術・腹腔鏡手術特有の合併症(腸閉塞、創部の感染など)がない
- 入院期間が短くてすむ
- 社会復帰が早い など
デメリット
子宮鏡下手術においては子宮内に挿入可能なスコープの大きさには限りがあるため、
以下のデメリットが挙げられます。
- 視野が狭い
- 切除、摘出可能な病変の大きさに限りがある(病変の数、位置などにもよる)
- 病変が大きい場合、一度の手術で取り切れない場合がある
治療対象となる病気の種類によっては、他の治療法(開腹手術、腹腔鏡手術、あるいは飲み薬や注射薬などによる治療法)と比較したメリットやデメリットは異なります。詳細は外来受診された際にご説明します。
子宮鏡下手術の合併症
子宮鏡下手術特有のものとしては、以下の症状が挙げられます。
子宮穿孔
レゼクトスコープなどの操作機器によって子宮の壁を貫通してしまうこと
水中毒
子宮内腔を観察するために使用する液による電解質の異常
その他には、子宮鏡下手術に限らず手術一般にありうる合併症として、手術後の異常出血や感染があります。
また麻酔の合併症として頭痛、悪心・嘔吐などもあり得ます。もちろん、これらの合併症が起こらないように十分注意して手術に望みます。
子宮鏡下手術はあくまで治療法の選択肢のひとつです。子宮鏡下手術以外の治療法とのメリット・デメリットなどを比較検討した上で、手術を実施するか決定いたします。